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【Q9】孔食試験結果からの教訓は?
美人薄命、アバタ(孔食)に注意しましょう
1)焼け取り法による違い
【解説】
SUS304の2B材を対象とし、溶接施工した試片と、これを種々の方法や条件で焼け取りを行なった後で孔食試験(10%塩化第二鉄溶液2時間浸漬)を行なった結果、【写真12】に示す如く次のような傾向が確認されました。
| (1)溶接焼けのまま 焼けを取らないと、全面にピットが発生。 |
![]() 【写真12-1】溶接焼けのまま(全面に孔食発生) |
| (2)サンドペーパー磨き サンドペーパーで焼け取りすると、活性化が進んでビード部には大きいピットと、周辺部にも同様に小ピットが多数発生。 |
![]() 【写真12-2】サンドペーパー磨き(全面に孔食発生) |
| (3)硝弗酸浸漬 一方硝弗酸による焼け取りもビード部に大きいピットが集中し、周辺部にも極小ピットが多数発生しているのが認められる。 |
![]() 【写真12-3】硝弗酸浸漬(ビード部に孔食集中し周辺にも小ピット多数) |
| (4)直流電解(短時間) ※使用電解液:ピカ素#200 当社製中性電解液NEO#200を用い、直流電解で軽く焼け取りすると、周辺部には異常なくビード面に大きいピットが散在。 |
![]() 【写真12-4】直流電解(短時間)(ビード部にピット大、周辺部にはなし) |
| (5)直流電解(長時間) ※使用電解液:ピカ素#200 電解時間を更に時間延長すると、ビード部のピットも減少し、時間とともにうもれたスケール取りや不動態化が進行している。 |
![]() 【写真12-5】直流電解(長時間)(ビード部にピット小、周辺部にはなし) |
| (6)交直重乗電解 ※使用電解液:ピカ素#200 |
![]() 【写真12-6】交直重乗電解(全面にピットなし) |
さらに電解液は同じでも、電源器を交直重乗方式にかえてみると、アンダースケール層の溶解も速くなり、同時に不動態化度も進んで、ピットの発生は全く認められなくなることが確認された。
以上の如く、ペーパーやサンダーがけなどの方法は勿論、硝弗酸はその組成からみても酸化性の硝酸に対し還元性の弗酸が共存しているので、完全な不動態化被膜は形成されていないため、特にビード部にはピットを多発したものと考えられます。
これに対し中性塩直流電解法も陽極酸化(不動態化)による地金の溶解力の抑制と陽極溶解に基づく地金の溶解という相矛盾した反応が同時に起こるため、完璧を期するためには可成り入念な処理を要することがうかがえますが、当社の特許方式に基づく交直重乗方式では、特に溶解反応が促進されることもあって、比較的短時間内にビード面のかみ込みスラグもきれいに取れ、完全な不動態化を伴った焼け取り作業が期待出来ることを裏づけています。
なお、硝弗酸については予想外の結果が出ましたが、弗酸はQ1に於て述べた塩素と同類のハロゲン族として、ステンレスに対しては宿敵の間柄にあり、その証拠にステンレスを硝酸の中に投入してもビクとも反応しませんが、これに弗酸を少量滴加すると俄然溶け始めることからみても、弗酸には不動態化膜を破壊する作用があります。このためこれらを混合した通称「硝弗酸」の酸化(不動態化)力が硝酸単独より優れているとは考えられませんし、また前記の通り熱濃硝酸を用いないと完全な不動態化効果は得られないことからみても頷けます。
2)交流法と交直重乗法とによる違い
【写真13】は、中性電解液でも最近市場に出始めた交流用電解液と当社の直流電解用中性液とを比較したもので、
(1)中性塩電解(交流法)
交流電解法の特性として、スケールにのみ反応しアンダースケールや地金部には反応しないため、溶接ビード周辺の溶体化域の仕上がりムラもなく、外見上は極めてきれいに仕上がっているが、孔食試験後の状況は、1000℃以上に加熱された溶体化部を除き、鋭敏化したその外側やビード部には、無数のピットが発生していることが認められる。
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| 【写真13-1】溶接後 | 【写真13-2】焼け取り後 | 【写真13-3】孔食試験後 |
(2)中性塩電解(交直重乗流法)
一方、当社製の交直重乗法によると、焼け取り後のビード周辺に若干のボケは見られるものの、孔食試験後の表面には全く孔食や異常は認められない。
このように溶接部の周辺に於ては、ビードを中心にして1000℃以上に加熱された通称溶体化部と、さらにその外側の鋭敏化部とが共存しており、さらに組織変化が激しいため、機械的な鏡面仕上げ法によらない限り、硝弗酸或は直流電解のようにその表面を化学的に溶かすような手法の場合には、各金属組織に応じて夫々に対する感受性が異なるため、焼け取り後に於ける仕上りに白ボケなどのムラを生ずることは避け難く、反対に交流法による仕上りがきれいな理由は、スケールとヒュームとにのみ反応し、その周辺部に対しては、地金部は勿論前述のアンダースケール層にも全く反応していないためで、無数の孔食を発生するのも当然であり、外見上きれいな仕上げよりもダル材のようなにぶい光沢仕上げの方が一般には不動態化されていることが多く耐食性もよい。
【写真14】左半分は交流電解処理、右半分は交直重乗電解処理。当社比(電解液は夫々異なるメーカーの中性液)
このような焼け取り法で施工されたステンレス製品は、孔食から早晩異常腐食へと進展する可能性を秘めており、「美人薄命」ということがあてはまるでしょう。









